贈り物は、人と人との心をつなぐ大切なコミュニケーションのひとつ。
誕生日、結婚式、引越し祝い、感謝の気持ちの表現など、世界中でさまざまな場面に登場します。
「贈る」という行為そのものが、国や文化によってまったく意味が変わることがあるのをご存じでしょうか?
同じものでも「喜ばれる」国と「失礼になる」国がある。
同じタイミングでも「ベストな贈り方」と「マナー違反な渡し方」がある。
この記事では、世界各国の贈り物文化を通して、ちょっとした“カルチャーショック”を味わえるようなトピックをお届けします。
旅行好きな方はもちろん、国際的な交流がある方、そして単純に文化に興味がある方にもおすすめです!
日本:贈ること自体が「儀式」になる文化
日本では「贈り物=相手への敬意・感謝・お詫びの表現」として、非常に形式的な意味を持ちます。
例えば:
- 熨斗(のし)や水引きは、贈る目的やシチュエーションに合わせて種類を使い分ける
- 贈答のタイミングも重要(年末年始の「お歳暮・お中元」、引っ越し後の「粗品」など)
- 品物の金額は「高すぎず安すぎず」が理想。相手に気を遣わせない心配りが大切
また、日本では「包装が命」とも言われます。美しく丁寧に包まれた贈り物は、それだけで「あなたを思っていますよ」というメッセージになるのです。
ただし、縁起を担ぐ日本ならではのタブーもあります。
たとえば「4個入り」や「9個入り」のギフトは避けるのが基本です。これは「死」「苦」を連想させるから。
香典返しなど、悲しみの場面以外では避けるのが無難です。
アメリカ:カジュアルで合理的、でも心はこもっている

アメリカでは贈り物は「感情表現の延長線上」にある、非常にカジュアルな行為。
誕生日パーティーや出産祝いなどの場面でのプレゼントは当たり前で、“相手の笑顔を見ること”が目的です。
ユニークな点は以下の通り:
- プレゼントは**レジストリ(欲しいものリスト)**を使うのが一般的。新郎新婦が「欲しいものをあらかじめリスト化」し、ゲストがそこから選んで贈る文化です
- ギフトカード(Amazonや百貨店のプリペイドカード)を贈るのもポピュラー。「無難だけど実用的」な選択肢として重宝されます
さらに、パーティーではプレゼントの開封を皆の前で行うのがマナー。
包装紙をビリビリに破いて開けることも、遠慮がない=うれしい!というアメリカ的リアクションであり、場を盛り上げる要素でもあるのです。
中国:意味を重んじるシンボル重視の文化
中国では、贈り物にこめられた「象徴的意味」を非常に重視します。
そのため、物の見た目や由来だけでなく、音の響きや色、数量にも細心の注意が必要です。
贈るとNGなもの例:
- 時計(钟 zhōng) →「終わりを贈る(送钟 sòng zhōng)」という発音が死を連想させる
- 傘(伞 sǎn) →「分かれる・離れる」と同じ発音になるため、カップルや友人にはNG
- 梨(梨 lí) →「別れ(离 lí)」と同音なので避けられる
縁起の良い贈り物:
- 赤い包装紙 → 幸福・繁栄の象徴として好まれる(お年玉袋「紅包」も赤)
- 偶数は基本OK(特に8) →「発(発財 fācái)」と同音のため縁起が良い
また、中国でも「贈り物を目の前で開ける」ことは失礼とされる場面があります。
**「あなたの反応を試しているように見える」**と解釈されるため、後でこっそり開けるのが礼儀という考え方が残っています。
フランス:美学とセンスが問われる贈り物
フランス人は美意識が高く、贈り物の選び方やセンスにもこだわりがあります。
パーティーや訪問時には、次のようなアイテムが人気:
- 上質なチョコレートや焼き菓子
- 花束(ただし「偶数本はNG」、「菊は葬式用」など注意点も)
- 地元の特産ワイン(ただし相手が料理を用意している場合は避けた方が無難)
注意点:
フランスでは、「相手の好みに口を出す=無礼」と受け取られることがあります。
そのため、ワインや香水など**“好みが分かれる物”は避けるか、相手の趣味をよく知っている場合に限る**のが鉄則。
また、贈り物には必ず手書きのメッセージカードを添えるのが好印象です。
アラブ諸国:宗教がマナーに大きく関係する文化
イスラム教が中心のアラブ地域では、贈り物の内容・渡し方・タイミングに関して、非常に厳格な文化的背景があります。
注意すべきマナー:
- 左手で物を渡すのはNG:左手は不浄とされており、必ず右手または両手で渡す
- アルコール類、豚肉由来の食品は避ける:宗教上の禁忌に触れてしまう恐れあり
- 贈り物をすぐに開けない:礼儀として、その場では開封せず、後から静かに開けるのが一般的
また、アラブ文化では「贈る行為=誇り」とされており、高価な品や豪華な包装が歓迎される傾向もあります。見栄や誇示ではなく、「あなたを大切に思っている証」としての意味が強いのです。
インド:宗教と地域に合わせた細やかな配慮が必要
インドは多民族・多宗教国家であるため、贈り物をする際は相手の文化背景をよく把握しておくことが重要です。
NGポイント例:
- ヒンドゥー教徒 → 牛由来の製品(革製品など)はタブー
- イスラム教徒 → 豚肉製品・アルコールはNG
- ジャイナ教徒 → 根菜や動物由来食品すら避ける人も
また、贈り物のやり取りには「右手のみ(または両手)」を使うことが基本であり、左手はNGです。
包装には色彩豊かなものが好まれ、金色・赤・オレンジなどのビビッドなカラーが祝い事にふさわしいとされています。逆に、白や黒は死や不幸を連想させるため避けるのが一般的です。
贈り物は“文化を映す鏡”
贈り物はただの物のやり取りではなく、その国の「価値観・宗教・歴史・マナー」が詰まった文化的な行為です。
違いを知ることは、他者を理解し、敬意を持って接する第一歩。
そしてそれは、相手にとって一番の「贈り物」になるかもしれません。
旅行先でちょっとしたお土産を選ぶとき。
外国の友人に何か贈るとき。
あるいは国際的なビジネスの現場で――
この知識が、あなたの心遣いをさらに深く、温かくする手助けになりますように。
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